D/Cは、文化の力を「どれくらい育っているか」を見るための見方です。中で積み重なっている度合いを密度(Density)、ちがう領域どうしが結び合っている度合いを結合度(Connectivity)と呼びます。密度が高いほど、やり方や意味が安定して続きやすくなります。結合度が高いほど、領域をまたいで力が連動し、場として再生産されやすくなります。
D(密度)とは何ですか?
密度は、ひとつの領域の中で、やり方や意味がどれだけ整い、精度が上がり、続けて再生産できているかを見る軸です。積み重ねが薄いと、毎回やり直しになります。積み重ねが厚いと、自然に続きます。
C(結合度)とは何ですか?
結合度は、複数の領域がどれだけ結びつき、相互に影響し合い、全体として回っているかを見る軸です。つながりが弱いと、点のまま終わります。つながりが強いと、仕組みとして残ります。
D/C分析は何のために使いますか?
D/C分析は、「資源×作用→力」がどこまで成立しているかを観測するために使います。密度だけ高くても内向きに閉じやすいですし、結合度だけ高くても中身が薄くなりがちです。両方を並べて見ると、次に手を入れる場所が分かります。
関連ページ:背景|文化の力フレーム
詳しい定義
文化の力は、内部の成熟(D:密度)と、諸力との連関(C:結合度)の両面によって強度が決まります。
- D(密度):ひとつの力の内部がどれだけ秩序として定まり、精度が高まり、継続して再生産されるか
- C(結合度):複数領域の力がどれだけ構造的に連動し、相互作用し、場として再生産されるか
文化の生成力は、P = f(D × C) として理解できます。
D:密度(Density)
密度Dは、ひとつの力がどの程度、秩序として定まり、精度が高まり、継続して再生産されているかを測る軸です。Dは、次の三点がどれほど揃っているかによって判断します。
- 時間的継続 行為や仕組みが長期にわたり反復されていること。
- 構造化・精度 手順・判断基準・役割が明確で、改善が続いていること。
- 共有・浸透 やり方や判断が複数主体・世代に共有されていること。
Dスコア(0〜5)
D=0:単発(Non-recurrent)
一度きりの出来事であり、継続・型・継承が読み取れない。
D=1:初期反復(Loose Repetition)
何度か繰り返されているが、方法が安定しておらず、個人依存の段階。
D=2:安定反復(Stable Routine)
同じやり方で反復されるようになり、簡易な基準や仕組みが共有されている。
→ この段階から力としての初期成立が可能。
D=3:持続研磨(Continuous Refinement)
複数主体の関与による改善が継続し、手順・役割・判断の萌芽が見える。
D=4:制度化(Institutionalization)
反復・研磨・共創が体系化され、継承の仕組みが安定して成立している。
D=5:高密度(Aesthetic Internalization)
制度を超えて、暗黙の美学・価値規範として共同体内部に内在化している段階。
次が必須となる:
- 美学の浸透:行為・判断・表現が“らしさ”として自然に共有されている。
- 制度を超えた統一性:感性・作法が自律的に働き、外部入力なしでも更新される。
- 誇りの内面化:文化の基準が共同体の自負として保持されている。
例:京都の町家文化|ウィーンのカフェ文化|エルメスの文化。
C:結合度(Connectivity)
結合度Cは、複数領域の力がどの程度、構造的に連動し、相互作用し、場として再生産されているかを測る軸です。結合度を見る際は、次の3点を中心に観測します。
- 諸力の往還 ある力の変化が、別の力に影響し返っているか。
- 横断的な場の存在 複数領域の力がひとつの拠点・仕組み・制度に統合されているか。
- 翻訳・異和・適応の多層連動 複数の作用が複数領域の力にまたがって働き、構造を更新しているか。
Cスコア(0〜5)
C=0:孤立(Isolated)
ひとつの力が単独で存在し、他領域の力との接続がない。
C=1:点の接続(Point Contact)
2つの力が偶発的・単発的に接触する段階。継続性はない。
C=2:線の接続(Linear Connection)
複数領域の力が意図的に連動しているが、場としての安定性は弱い。
例:単年度プロジェクト、期間限定の協働。
C=3:継続的な接続(Sustained Interaction)
2〜3領域の力が継続的に相互作用し、「面」としての接続が生まれている。
例:祭り運営、ブランドWGなど。
C=4:場の成立(Institutionalized Field)
複数領域の力が拠点・制度として安定的に再生産されている段階。
例:ナパのワイン文化の場、サンセバスチャンの美食文化。
C=5:文化装置(Cultural Apparatus)
C=4 を超えて、複数領域の力が美学・規範・作法として統合され、自律的に再生産される段階。
次が必須となる:
- 美学的統合:3つ以上の領域の力が価値基準として統合されている。
- 自律的再生産:文化の内部ロジックによって自走する。
- 共同体的内在:作法・規範が自然に共有されている。
例:京都の町家文化|歌舞伎文化|江戸時代の化政文化|エルメスの文化。
力の成立条件と判定基準
- D≧2:力の最低成立ライン
- D=3〜4:成熟した力
- D=5:美学化された力
- C=0〜1:ひとつの力または偶発的連関の段階
- C=2:試験的連関
- C=3:複数領域の力の成熟過程
- C=4:場としての高成熟
- C=5:文化装置としての自律段階
力として認定する場合は、D(内部成熟)と C(外部結合)の双方が十分に確認できることが望ましい。
運用上の原則
- 文化の力フレームは、文化を制御するための道具ではありません。
- 文化の力フレームは、文化と応答し続けるための方法です。
- 文化は、制御しようとすると沈黙します。