Project

文化の力フレーム

文化の力を観測し、応答する

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文化の力をひらく

文化を未来の力にする。

そのための方法が、文化の力フレームです。

このページでは、文化の力フレームをくわしく説明します。

先に「考え方」「背景」「使い方」を見たい方は、下の入口からどうぞ。

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文化は見えない力です。

歴史ある街並みと、新しくつくられた街並みを比べると、

見た目の美しさでは新しい方が勝るかもしれません。

それでも人が惹かれるのは、長い時間と関係の積み重ねによって生まれた厚みのある場所です。

文化の力フレームは、この「見えない力」を読み解き、応答するための枠組みです。

文化とは

私たちは、文化を「身体・場所・時間・関係に埋め込まれた力」と考えています。

この力は、環境・関係・技術・歴史という4つの側面として観測できます。

場所に埋め込まれた力は、地域や組織の未来をひらく「文脈」となり、

関係に埋め込まれた力は、人と人が安心してともにいるための「ゆるやかな共在」を支えます。

身体に埋め込まれた力は、技やふるまいを通じて世界に応答する「響き合う応答精度」を高め、

時間に埋め込まれた力は、経験や記憶を整理しなおす「いまに活かせるアーカイブ」として働きます。

そして、これら4つの力を結び、どの方向へ向かわせるのかを示す知が、「真・善・美の道標」として働きます。

こうして立ち上がった5つの力の総体としての文化の力が、

ひとつの社会や集団における「関係の結び方」と「世界の意味づけのパターン」をかたちづくります。

私たちは、文化をそのような力と構造の重なりとして捉えています。

文化の力フレームとは

文化の力フレームは、身体・場所・時間・関係に現れる文化の力を観測し、その動きに応答する実践を考えるための枠組みです。

ここでいう「応答する」とは、次の三つの働きを指します。

  1. いま起きている文化の動きを、「資源 × 作用 → 力」というかたちで言語化する
  2. その動きとズレないように、関わり方・場づくり・企画の「次の一手」を選ぶ
  3. その試行の結果をふまえて、ふたたび観測し、文化の力フレームの見取り図そのものも更新していく

分析のレベルでは、文化を5つの資源として扱います。

環境・関係・技術・歴史という4つの資源に、それらを結び意味づける「知」を加えたものです。

これら5つの資源に対して、7つの作用(反復・再生・研磨・共創・適応・翻訳・異和)が働くことで、

それぞれの資源に眠っていた力が表に現れ、環境の力、関係の力、技術の力、歴史の力、知の力が立ち上がります。

そして、異なる領域の力どうしが連関することで、全体としての文化の力がかたちづくられていきます。

資源をみつける

区分定義
環境資源人の活動を成り立たせる空間的・自然的・社会的な条件
関係資源まだ安定した関係が成立していないものの、将来の結びつきの芽がすでに存在している状態
技術資源生活や生産の中で培われ、共有・継承されてきた手技・作法・工程・判断からなる実践知
歴史資源時間の中で蓄積されてきた人々の営み・記憶・制度・物語
知的資源人々が世界をどのように理解し、価値づけるかを支える思考の基盤

環境資源関係資源技術資源歴史資源知的資源

作用を使う

自然と人、技、関係などの資源を動かすのが作用です。

反復・再生・研磨・共創・適応・翻訳・異和。

この7つの働きによって、資源は力へと転換します。

作用概要定義
反復作用文化を維持・継続する
再生作用眠っていた形式・記憶を再稼働させる
研磨作用磨き上げ研ぎ澄まし、本質を際立たせる
共創作用新しい関係や創造を生む協働
適応作用変化に対応して調整・更新する
翻訳作用異なる体系や文脈をつなぎ、共通理解へ変換する
異和作用異質な出会いによる転換

反復作用再生作用研磨作用共創作用適応作用翻訳作用異和作用

力を引き出す

資源に作用が働くことで、その内に眠る力が引き出されます。

5つの力が連関することによって、文化の力が立ち上がります。

区分定義
環境の力未来をひらく文脈
関係の力ゆるやかな共在
技術の力響き合う応答精度
歴史の力いまに活かせるアーカイブ
知の力真・善・美の道標

環境の力関係の力技術の力歴史の力知の力

文化が育つプロセス

文化は、生成発展する動的なプロセスです。

それは、3つの段階で観測できます。

段階概要
萌芽期資源が点在。まだ結びつきがない。
生成期一部の資源に作用が働き、力が立ち上がる段階
成立期諸力がつながり、文化の力が立ち上がる。

成立期の文化事例

文化の力を測る

文化の力(P)は、密度(D)と結合度(C)の掛け合わせと捉えます。

P = f(D × C)

記号意味
D(Density/密度)資源に対して働く作用の量や質。
C(Connectivity/結合)異なる領域の力をつなぐ作用の量や質、作用を持続する基盤の有無。

D/C分析は、文化の力を観測する指標のひとつとして活用できます。

文化の力フレームの使い方

文化の力フレームは、文化を資源×作用に因数分解し分析することで、

過去の読み解きにも、未来の方向性を考えるときにも活用できます。

これは地域や企業、プロジェクトが、実践の中で文化の力を活かすための支援ツールです。

文化の力をひらく3つの事業

運用上の原則

  • 文化の力フレームは、文化を制御するための道具ではありません。
  • 文化の力フレームは、文化と応答し続けるための方法です。
  • 文化は、制御しようとすると沈黙します。

このフレームの改訂履歴を記録しています。本フレームは、DOIを付して公開しています。

  • [v0.4|2025-12-08]実務第4版/DOI登録版:循環モデルから構造モデルへ転換/共鳴・痕跡の概念を一時停止/資本を力に置き換え/文化の力を再定義/名称を文化の力フレームに変更 DOI: 10.5281/zenodo.17852096
  • [v0.3.2|2025-10-24]共鳴循環モデル定義ページを追加 DOI:10.5281/zenodo.17431045
  • [v0.3.1|2025-10-18]文化資本と価値の定義を更新
  • [v0.3|2025-10-16]資源‐文化資本の循環プロセスを整理/作用を内発的作用・外発的作用に整理/適応作用を復帰/知的資源を追加
  • [v0.2.2|2025-10-10]資本と主観的価値・社会的価値・経済的価値を整理/適応作用を削除
  • [v0.2.1|2025-09-19]洗練作用を研磨作用に置き換え/作用間の連携を追加
  • [v0.2|2025-09-16]4つの資源(環境・関係・技術・歴史)と7つの作用(反復・洗練・共創・適応・再生・翻訳・異和)で再構築
  • [v0.1|2025-09-14]文化という資本を5つの軸(環境・関係・技術・歴史・翻訳)の回路で整理