新しい関係や創造を生む協働

1. 概要

共創作用とは、異なる主体が協働する過程で、新たな関係性や仕組み、創造を生む働きです。

単なる分担ではなく、相互のやり取りが重なり合うことで、新しい理解が共有されます。

共創の場は、偶発性に満ちており、参加者の意図どおりには進みません。そのままならなさゆえに、誰も予想していなかったアイデアや関係性が立ち上がる可能性を秘めています。

文化の力フレームでは、共創作用を、力の連関をつくり、結合度(C)を高める主要な生成プロセスとして位置づけています。

2.資源に眠る力を引き出す

複数の主体が異なる知識や経験を持ち寄ることで、新しい文脈やアイデアを生み出します。

創造的な活動を共にすることで、関係性を育てます。

  • 環境資源:多様な主体が協働する中で、環境に秘められた現代的な文脈を見出す(持続可能性など)。
  • 関係資源:自由で探索的な関わりから、ゆるやかな共在が形成される。
  • 技術資源:職人・研究者・デザイナーが協働し、異なる分野にまたがる応答精度を高める。
  • 知的資源:多様な主体の共創により、納得感のあるビジョンやルールを形成する。

3. 力の連関により文化の力を引き出す

成立期の文化において、共創作用は力の連関を生む場をつくります。

異なる力が共通の方向を持ち、実験・検証・制作を通じて、互いの働きを深めていく段階です。

  • サンセバスチャンの美食文化:シェフのラボ、食の大学など共同研究や教育の場から革新的な技術が生まれ、美食の国際会議で共有。美食を軸に観光・学問・経済など異領域が連関している。
  • ナパのワイン文化:農業・学術・観光業が協働することで、技術の力・関係の力・知の力が連関し、ワインツーリズムを世界的な観光ブランドへと育てた。
  • エルメスの文化:職人、デザイナー、アートディレクターが対話と試作を重ねる共創的なプロセスをとっている。職人の技術とデザインの視点が応答し合うことで、素材の扱い方やフォルム、色彩、モチーフに一貫した設計言語が生まれ、メゾンのハウスコードの基礎が形成されていく。

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4. 他作用との関係

共創作用は、諸力の連関の中心で働きます。

他の作用と連携しながら、関係や知を共有し、新しい仕組みや制度を具体化します。

特に「再生」「研磨」「翻訳」「反復」との関係が強く見られます。

  • 再生作用:再生によって掘り起こされた要素を、他者との協働によって新しい形へ再構成する。 (例:京都町家文化での職人と設計者の協働による伝統の再生活用)
  • 研磨作用:共創で生まれた仕組みや技術を、研磨が実務に耐える制度や標準へ整える。 (例:サンセバスチャンでのシェフ間協働を通じた技法の精度向上)
  • 翻訳作用:共創の場で生まれた異分野の知や言語を、翻訳が共通理解へ変換する。 (例:ナパで農業・学術・観光が共有できる基準や表現を形成)
  • 反復作用:共創による新しい協働の形を、反復が継続的な実践として定着させる。 (例:地域内での教育・訓練・行事などを通じた協働の持続化)