1. 概要

環境資源とは、人の活動を成り立たせる空間的・自然的・社会的な条件を指します。

地形や気候といった自然環境に加え、土地の利用、道路や水路などの基盤、制度や慣習といった社会的な枠組みも含まれます。

これらは主体の意思では動かしにくい外在的な前提条件であり、

その内部には、風土や場所性がもつ潜在的な力が埋め込まれています。

この力は、そのままでは見えにくいものの、解釈や関わり方が変わることで

新しい文脈として立ち上がる可能性をもちます。

2. 特性

  • 基層性:人や文化、組織の営みを支える前提的な構造として存在する。
  • 潜在性:現状では制度化・活用されていないが、創造的転換の余地を含む
  • 相互生成性:人の行為や技術との相互作用を通じて、新たな文脈を生み出す
  • 再解釈性:環境の意味づけを変えることで、未来志向の可能性を開く

3. 構成要素と環境の力への転化

環境資源は以下の層で構成され、

それぞれが「前提の反転(=環境の再解釈)」を経て未来をひらく文脈(=環境の力)へと転化します。

構成要素内容転化の方向
自然条件地形、気候、水系、土壌、生態系など。制約条件の理解から、美や文化の契機としての再解釈へ。
空間構造集落配置、道路・水路、建築・都市構造。機能的空間から、行為や関係を誘発する文化的空間へ。
生活基盤農地・住宅・港湾・交通・灌漑などの基礎構造、および産業・事業の基盤となる設備・インフラ。生存基盤から、文化的活動や共同体形成の舞台へ。
社会的環境制度・慣習・法規・共同管理の仕組み、市場環境。制約や規範から、創造や共生を促す枠組みへ再編。

4. 事例観測

事例環境資源の要素環境の力への転化
雪国の生活文化豪雪という制約条件雪を資源・知恵として活かし、文化的アイデンティティへ転化。
都市再生の取り組み老朽化した建築群・制度的制約新素材・新技術を取り込み、伝統技術を持続可能な形に変える。
農村景観の保全活動棚田・水系・集落配置景観・観光・教育において、持続可能性という文脈へ接続。
産業構造転換地域経済変動・市場環境の変化社会変化を契機に新産業・新文化の起点へ再編。
企業の事業環境の変化法制度の改正・市場構造の変動制度や市場の変化を契機に、事業の再編や新領域創出の文脈へ再解釈。

5. 判定基準・境界条件

5-1. 歴史資源との境界

同じ対象でも、「現在の場の条件」として語られている場合は環境資源として扱います。

時間的な蓄積そのものが主題になる場合は、歴史資源との境界に注意してください(詳しくは「歴史資源」の定義を参照)。