技術資源とは、生活や生産の中で培われ、共有・継承されてきた
手技・作法・工程・判断からなる実践知です。
また近年では、AI やデジタル技術のように、知的資源との接続によって
自己更新する技術体系もこれに含まれます。
これらの技術が、個人や狭い関係の中に留まっている段階では、
人と素材、環境との関わりの中で育まれた精度があっても、文化としては潜在的な力にとどまります。
この力は、言語化・共有・制度化を通じて整えられることで、
響き合う応答精度となり、「技術の力」として立ち上がります。
技術資源は、以下の要素を内包し、反復・研磨・適応・異和などの作用を通じて、
響き合う応答精度(=技術の力)へと転化します。
| 構成要素 | 内容 | 転化の方向 |
| 身体技法・所作 | 手さばき、型、動作、呼吸などの身体的知 | 反復・研磨により対象への応答精度が高まり、型が安定して、伝承の枠組みへ移行していく。 |
| 道具・器具・装置 | 包丁、版木、織機、舞台機構など | 環境適応や異和により改良・革新が進み、対象への応答精度が高まる。 |
| 工程・手順 | 仕込み、構成、仕上げ、転換などの手順的知 | 反復と記録化により多様な主体間の応答精度が向上し、再現性が高まる。 |
| 意匠・構図 | 盛付けやレイアウト、形や配色などの文法 | 研磨と翻訳を経て、多様な主体間の応答精度が向上する。 |
| 記録・記述 | レシピ、譜面、設計図、型紙など | 研磨と翻訳を経て標準化されることで、多様な主体間及び時間を越えた応答精度が向上する。 |
| 継承の仕組み | 徒弟制、稽古体系、ライセンス、教育機関など | 反復と記述・制度化を経て、時間を越えた応答精度が向上する。 |
| 事例 | 技術資源の要素 | 技術の力への転化 |
| 伝統工芸 | 手技・道具・型などの身体技術 | 反復と研磨により対象への応答精度が高まり、地域固有の技能体系へ向かう。 |
| 料理文化 | 素材と調理法の知 | 科学・教育との異和により、技術が再解釈され、新たな体系へ向かう。 |
| 工業デザイン | 設計・製造工程・仕上げ技法 | 翻訳と適応により、多主体で共有可能な基準へと整理され、制度化へ向かう。 |
| ファッションや縫製 | 素材・裁断・縫製技術 | 環境変化や市場要請に応じた適応により、独自の様式が育ち、研磨や標準化を進めて体系へ向かう。 |
同じ対象でも、「そこにあること自体」ではなく、「どう扱うか・どう運用するか」という手順・工夫が主題になっているとき、それは技術資源です。
例:豪雪地帯という気候は環境資源ですが、その雪をどの順番でどこに寄せるかという除雪手順は技術資源です。