環境資源とは、人の活動を成り立たせる空間的・自然的・社会的な条件を指します。
地形や気候といった自然環境に加え、土地の利用、道路や水路などの基盤、制度や慣習といった社会的な枠組みも含まれます。
これらは主体の意思では動かしにくい外在的な前提条件であり、
その内部には、風土や場所性がもつ潜在的な力が埋め込まれています。
この力は、そのままでは見えにくいものの、解釈や関わり方が変わることで
新しい文脈として立ち上がる可能性をもちます。
環境資源は以下の層で構成され、
それぞれが「前提の反転(=環境の再解釈)」を経て未来をひらく文脈(=環境の力)へと転化します。
| 構成要素 | 内容 | 転化の方向 |
| 自然条件 | 地形、気候、水系、土壌、生態系など。 | 制約条件の理解から、美や文化の契機としての再解釈へ。 |
| 空間構造 | 集落配置、道路・水路、建築・都市構造。 | 機能的空間から、行為や関係を誘発する文化的空間へ。 |
| 生活基盤 | 農地・住宅・港湾・交通・灌漑などの基礎構造、および産業・事業の基盤となる設備・インフラ。 | 生存基盤から、文化的活動や共同体形成の舞台へ。 |
| 社会的環境 | 制度・慣習・法規・共同管理の仕組み、市場環境。 | 制約や規範から、創造や共生を促す枠組みへ再編。 |
| 事例 | 環境資源の要素 | 環境の力への転化 |
| 雪国の生活文化 | 豪雪という制約条件 | 雪を資源・知恵として活かし、文化的アイデンティティへ転化。 |
| 都市再生の取り組み | 老朽化した建築群・制度的制約 | 新素材・新技術を取り込み、伝統技術を持続可能な形に変える。 |
| 農村景観の保全活動 | 棚田・水系・集落配置 | 景観・観光・教育において、持続可能性という文脈へ接続。 |
| 産業構造転換地域 | 経済変動・市場環境の変化 | 社会変化を契機に新産業・新文化の起点へ再編。 |
| 企業の事業環境の変化 | 法制度の改正・市場構造の変動 | 制度や市場の変化を契機に、事業の再編や新領域創出の文脈へ再解釈。 |
同じ対象でも、「現在の場の条件」として語られている場合は環境資源として扱います。
時間的な蓄積そのものが主題になる場合は、歴史資源との境界に注意してください(詳しくは「歴史資源」の定義を参照)。